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石橋敏郎教授 講演録 

お知らせ 2019.12.17

 去る、11月15日に 「人を育てる」~今、子育てにとって一番大切なこと~ と題して、広報誌のコラム「人生一生勉強だ」でおなじみの石橋敏郎教授の講演会が行われました。
 参加者92名の皆様が、先生の熊本弁を交えた、笑いを交えた教育談義に心を打たれました。

 講演会のお話を一部載せますので、是非ご一読ください。

この講演の最後のほうで、石橋先生はこう強調されました。

「健康で豊かな老後を送るためには、一生勉強だという心を持ち続けることですよ。」

   

 先生の講演には、実際に生で聞いた人にしか共感できない何かがあります。

文章では説明できないので、講演の中で切り取った先生の言葉を掲示して、講演のご報告とさせていただきます。

  

「最近の子供たちを見ていますとね、自分の勉強を棚に上げて周りのせいにする子がいるんですよ。例えばね、○○君が勉強出来るのは家庭教師がついとらすもん。○○君が出来るのはちゃんと自分の勉強部屋があって、しかもクーラーまでもついとらす。僕は夏は暑うして勉強は出来ん。私は、そういう子供たちの言うことは一切聞かん。勉強部屋なんかいるもんですか。勉強する子は廊下にリンゴ箱ひっくり返しても勉強する。むしろ恵まれない状況で、それを努力によって克服する。そういう子供達のなかに将来の熊本を背負っていく子が育つんですよ。」

  

「先ず親ですよ。親が私をどんな風に教育したか。人生で一番大切なものは何なのか、それを教えてくれたのは大きいですよ。2番目にね。たった10人しかいない田舎の小学校で、兄弟のようだった友達。3番目に、自分の子供と他人の子供と分け隔てなく世話してくれた村の人たち。4番目に、南小国から見た涌蓋山や九重山や阿蘇山なんかの雄大な景色が教えてくれました。弁当のおかずの数とか、ファッションとか、住んでるところとか、どがんでんよか。そぎゃんとはちっぽけなこと。人生には、もっとスケールの大きな大切なものがある。あなたはそのことだけに関心を持ちなさい。子供はすべて環境によって作られる。それは間違いのないことです。」

  

「人間は下手すると自分の通っている高校や大学校の名前。あるいは努めている会社の名前によって、自分が偉くなったように思ってみたり、駄目になったように思ってみたりします。だけど、それは錯覚です。毎年4月になって入ってくる新入生にこんなのがいるんです。先生、僕は本当は違う大学にいきたかったんです。だけど、成績の関係で仕方なくこの大学に来てしまいました。あっそう。来たくないやつはくんな。俺ははじめからお前を指導するつもりはない。帰れ。高い金を出して大学を出ても、人様のお役にたつような人にはならんだろう。あのねぇ。光る人材はどこにいても光るし、光らない人材はいくら大学を出ても光らないんです。人間は、学校の名前とか会社の名前とかでその人の価値が決まるのではなく。それぞれ置かれた環境の中でどれだけ努力するかでその人の価値は決まるんです。」

  

「うんざりして当時の知事に文句をいいに行きました。知事こがん仕事はやめるばいた。知事から、先生は改革のために熊本に呼びました。最後まで腰をすえてやってもらわなきゃ困る。と言われました。なら、俺の好きなようにやらせてくれないか。5人でいいから自分で入学者を選ばせてくれといった。郡部の高校や農業工業高校で頑張っているいい生徒がいる。・・最初にひっぱてきた女学生は、天草農業高校の子。・・4年間育てて本渡市役所に戻した・・その子は天草農業高校出身だけれど、石橋先生のところで行政の勉強してきたと誇りを持ってくれる。そしたら町のために何かをやってくれる。それが私の考える町起こしなんですよ。珍しい建物を建てたりイベントすることだけが町起こしとは考えていない。町おこしの基本は人材です。組織の方はいかに人材が大事かをご存じでしょう。」

  

「その代わり、1年の時からいつも必ず連れて回らなきゃダメですよ。・・・講演会に行っても宴会に行っても旅行に行っても誰かがついてきます。・・正直言いますけど、時には煩わしいときもあります。博多の中州に一人でいきたいときもありますが、学生がいるのに行ける訳ないでしょう。それからお金は全部自分持ちです。田舎の連中は遠慮というもを知りません。忘れもしません、行ったことがないと言うので学生2人を東京に連れて行き、銀座の寿司屋に行きました。銀座のすし屋でトロとかアワビとか頼んだらどういうことになるか。食べたことないから頼んでみましょうかと言われ、私は冷や汗が出ました。・・というわけで、教育に携わるものが煩わしいという気持ちを持ったらおしまいです。・・・子供というのは、小学生であろうが中学生であろうが大学生であろうが、手をかけてやらなければ育たないんです。放っておいたら絶対育たない。遊ぶだけです。」

  

「熊本の県民性いいとこたくさんあります。親切で人情深い。とことん最後まで付き合ってくれます。その反面欠点もあります。熊本県民は見栄張り民族。それを無くすため40年頑張ってきたんですよ。・・うちの娘は熊本市内の進学校のどこどこに行きよる。うちの息子は東京の国立のどこどこ大学。いらんこったい。見栄を張ったり自慢する時代は終わりました。それは江戸時代までです。近代社会はたった二つのことだけで人間が評価される時代です。1つは本人が努力しているかどうか。2番目はその人の人柄が立派かどうか。たった2つで評価される。何故そういうことを考えたか。たった10人しかいない田舎の学校を出ても、コツコツ頑張っていれば絶対誰かが見つけてくれる、ということを私が知っているからです。私はそうやって見いだされてきた男です。」

  

「皆さん鎌倉幕府は何年に出来たか知ってますか。私は知らん。社会に出て大事なことは、組織には色々な人がいる。その人達の話を良く聞いてまとめて一つの方向に持っていくにはどうするか。人生には必ず壁がある、風雨がくる。それをどうやって乗り越えていくか。そういうことの方が大事でしょう。だから自分で考える能力を持ったやつを取ろうと決めたんです。」

  

「中学生とか高校生とかに能力の差はないんだと思った。じゃぁ何が差をつけるんだ。一番大きいのはね、その人が目標を持っているかどうかなんですよ。・・目標を持つと努力します。そして目標が達成されると自信というものがつきます。・・私だって都会の中学に行ったときは自信がなかった。英語の授業を聞いたときに外国人のごたった。俺は劣っとるかもしれんとちょっと思ったんですよ。だけど、努力しているうちに、あいつらより努力している俺が上だと分かった。今は自信があります。」

  

「熊本の学生は自信がないもの。だって、あの制服の人は勉強が出来るとまだいいよる。そんなことで地域の活性化なんかできる訳ないでしょうが。私たちは子供たちに、何でもいいですよボランティアでもいいし、スポーツでもいいし、勉強でもいい、自信を持たせる。これは大事なことですよ。これから皆さんが地域であるいは自分のお子さんがおられるけど、子育てをする場合にいくつかお願いしたいこと。私が最近教育の現場で大事にしていること。それはね、子供というのは感性というか子供らしい感性をもっているんです。それを大事にしてあげようということです。」

  

「日本の子供というのは、世界で最も自分の意見を言わないんです。何故そう言われるかというのは日本の教育の在り方なんですね。例えば大学ですね。300人ぐらいの講義をすると隣同士で喋りよっとがおるんですよ。最近は男同士で喋っとって気色悪いですよ。男は黙っているもんだと思ってたんですがね。・・・出てけぇと叱るんですがね。・・ところが、その後の演習の時間になると今度は黙るんですよ。・・その子は何故自分の意見を言えないんでしょうかね。私の想像ではね。間違った答えをいったらどうしよう。変な答えを言って皆から笑われたらどうしよう。・・正しい答えはなんだろうと考えてしまうんですね。・・アメリカの子供は違いますよ。・・子供の授業参観にいったとき、先生がアメリカ大陸を発見した人は誰でしょう。日本の子供は1492年にコロンブスというんでしょうけど、アメリカの子供は違います。手をあげて先生コロンブスは最初ここを発見したときアメリカ大陸と思っていなくて西インド諸島と思ってた訳だから、第一発見者ではありませんと言った。先生は拍手してグッドアイデアというんです。自分の頭で考えたからと。」

  

「社会に出て仕事されて、正しい答えを見つける仕事は殆どないんですよ。例えば熊本の県道が曲がってたから、橋を架けようとしたとき、・・・橋の近くのお母さんと離れた商店街のお父さんの意見は全く違って、どちらも正しい意見だった。・・じゃあどうするのか。・・これはどちらが正しいかという問題じゃない。何故ここにバイパスを作ろうとしたかということですよ。曲がりくねった路の中で、何でここが最初か、いくらお金がかかるのか。もっと安く上げる方法はないか。バイパスが出来ることで喜ぶ人はどういう人たちか。困る人はどういう人か。じゃあ総合的に判断して造るのかどうか。そういう判断でしょう。私は学生に正しい答えは何かと聞いたことは一度もない。あなたの答えは何か。正しかろうが間違っていようが僕はこう思いますと言わなきゃ。」

  

「問題起こさず、波風立てず、間違いなく仕事をしている。そんなムードの中で成果が生まれる訳ないって。時代を変えていく人ってのはですね。正しい答えを見つける人じゃないですよ。正しいか正しくないか分からんけど、俺はこうだって言える奴が時代を変えていく。日本を変えていく。だからそういう人材を作っていかなきゃ。・・・試験問題だっていっちょん変わっておらん。民法の問題で不動産の二重払いで最高裁はどの対応を示したか1から5までの中で正しいものを選べ。・・まだこがんことしよっとか。こんな問題で何が分かるか。・・なら先生だったらどうしますか。俺ならね、外の県にはない熊本だけの福祉施設は何ですか。あなたの考えで1200字以内で述べよ。それだと熊本の事を良く知ってて、自分の考えを言える人しか合格しない。」

  

「自分の好みを子供に押し付けないようにしよう。熊本の親は自分の好みを押し付けよるもんね。そりゃね素直になって欲しいとか。皆から好かれる子供になって欲しいとかそりゃいいですよ。ところがね、親のなかには狭い希望を持たれて、高校は是非あの高校に行って欲しい。大学は絶対あそこに行って欲しいってね。その希望は叶えられませんのでご安心ください。親が思うごつなるなら大ごつ。・・親が受験する気になってますもんね。女子大の同窓会で長男が受験なんで失礼しますって。53歳にもなってあなたが受験するつもりですか。頑張ってください。だって何の関係があっとですか。気色悪いですよ。・・好みと正しいことの区別が出来る。それが大人なんですよ。」

  

「大学行ってもいいです。行かなくてもいいです。どんな大学に行ってもいいですよ。どんな仕事についてもいいです。ただね、大学行ったり仕事についたりしたら、それぞれ置かれた環境の中で一生懸命頑張りなさい。人間の価値を決めるのはね、大学の名前とか会社の名前とかじゃありませんよ。その事を忘れないように。って言い続けてきてくれたから私は母親を大事にしてきたんです。残念ながら亡くなりましたが、これを出来る母親と出来ない母親は雲泥の差があります。大人になることとはどういうことか。大人っていうのはね、自分の好みとか色々ある。だけど、自分の好みと正しいことの区別が出来る人が大人と呼ばれるんです。それが出来ない人は歳だけくっても子供です。」

  

「全国でも最悪の県民性を持ってきたと言われてます。肥後の引き倒し。熊本県人頑張ってる人の足を引っ張るっていう悪い癖があったんですよ。PTAで活動している人がいたってするでしょう。あん人たちゃ好きでやってるんなら、やらせておけばいいんじゃない。あん人たちゃ目立ちたがりだけん。自分は何もしないで何かやっている人が気になるんですよ。そんなに気になるんならあんたも入ってやりゃいいじゃないですか、と言ってもしないんです。・・・あんたたちは良かなぁ勉強が好きで、私たちはもとから勉強はすかんもんな。ましてや暇暮らしで。ばあちゃん、あんたが勉強せんことで私は何も言うとらんですよ。だけど、勉強する人に向かって何でそぎゃんこつば言うんですか。」

  

「勉強していないお母さんは視野がせまい。そういう人と話してみるとご主人とののろけ話か子供の自慢話ばかり。私は子供の自慢話は2回まで聞きます。3回は聞きません。言わないようにお願いします。理由は面白くないからです。・・・つまらない自慢話はやめさせましょう。それどころか、お母さんつまらんねぇ。そがんことしか関心がないとだろか。お母さんこそ勉強されてください。勉強すっとね、違うことを考えるんよ。私や今まで口先だけは子供のため、子供のためと言い続けてきた。ただよう考えてみると自分が見栄張るため子供を利用したに過ぎないんではないかということが分かるよ。」

  

「今はいつ何時どんなことが起きるか分からない世の中でしょう。私は最近年取ったせいだろう、一期一会ということが分かる。人生はたった一回しか出会わない。そういう人がいるということが分かるようになったんですよ。だから私はどんな田舎のどんな小さな講演会でも手を抜いたことはないんですよ。私はこの40年間自分の持ってる情熱の全てをかけて話をしてきたんです。」

  

「またお会いしたときに、誰かが訪ねてくれてね。先生覚えてるですか。私はあの時話を聞いたよ。なかなか地域で助け合おうったって、柔おういかんとですたい。分かってくれん人もおります。足を引っ張る人もおります。だけど私は先生から、少なくとも勉強しとらんとか、あげくの果ては自分の好みと正しいことの区別もできん。そっだけは止めてくださいと言われました。それで勉強する機会を見つけて、こうして度々出かけていってるんですよ。とそう言ってください。一人でもよか。」

  

以上、令和元年11月15日 KKRホテル熊本の講演より。